きみのためのプレゼント

「お姉ちゃん、彼氏さんが!」


近くまで、私の代わりに見に行ってくれていた充が玄関口で大声をあげている。私は逸る気持ちを抑えながら、そっと車椅子に手をかけた。


「沙織、押すわよ」


「ううん。いいの。玄関口までなら頑張る」


「でも」と不安そうなお母さんの介助を断り、ゆっくりと教えてもらった通り、車椅子を動かした。最初はとても怖かった。いつも誰かに押してもらっていたから。


だけど、ハルの陸上競技大会ではっきりとした。私は、この車椅子と共にこれから生きていくと。だから自分で乗る練習をし始めたのだ。



「沙織、車椅子、自分で動かせるようになったの?」



大きな目を見開いて、驚いた表情を見せるのは、会いたくて、会いたくてたまらなかった翔平。


ボロボロと涙を浮かべて大声で言った言葉は「好き」でも「会いたかった」でもなく、「バカ」だった。



「ごめん、遅くなって」


頭の後ろに手をやりながら、少し照れ笑いを浮かべる翔平。よく見ると半袖のTシャツから覗く腕は傷だらけ。まだ新しいのか、血が出ているところもある。



「ど、どうしたの?その腕。傷だらけだよ」


「俺、沙織に言われて、ずっと考えてたんだ。何をすればいいか。それでとりあえず、自転車に挑戦しようと思ったんだけど・・・」


「ビックリしたよ。お姉ちゃんに見に行ってほしいって外に出たら、彼氏さん、傷だらけだったんだから」



あははと今度は、苦笑する翔平。本当に、本当に心配だった。連絡がつかないということがこんなにも不安を煽るのはきっと、【ナナ】の話を聞いたから。