きみのためのプレゼント

約束の十一時を過ぎても、連絡はなかった。さっきまではどうしようかと慌てふためいていたけれど、それが今度は、五分、十分と過ぎるごとに不安へと変わっていった。



なんで、どうして?私に会いたくないの?
やっぱり、嫌だと思った?よりにも寄って【ナナ】のパターンと同じ状況。


まさか、本当に連絡をしないじゃなくて、出来ないの?何かあったの?ここにくるまでに、事故?


考えたくないのに、頭にはそんな不安へと繋がる要素しか浮かんでこない。



「沙織!大丈夫?あなた、顔色悪いわよ」



「お母さん、翔平が来ないの。約束の時間、もう三十分を過ぎてるのに来ないの!」


まだ、何も伝えてない。伝えたいことがあるの。嫌だ、嫌だ。

光くん、お願い。翔平のことを守って!



「まだ、連絡取れないの?」



一時間が過ぎた。それでも、連絡はない。どうして、実家の電話番号を聞いてなかったのだろう。私たちを繋げるものは携帯電話だけ。携帯電話だけなんて、繋がらなければ無意味だ。



【ナナ】のことだって、携帯電話のメールアドレスしか知らなかったから、亡くなったことを知る術もなかった。



携帯電話だけじゃ、繋がってるなんて言えない。