きみのためのプレゼント

浦賀川の土手の階段。私が来ることを予想していたかのように車椅子に乗ったまま藤本くんは星空を眺めていた。


「やっぱり、晴れたね。良かった。織姫と彦星は巡り会えたんだろうね」


「・・・どうでもいい。そんなこと。もう何もかもどうでもいいの」


「・・・どうしたの?って俺が聞いても答えてくれないだろうね」


うるさいよ。七夕とか、織姫とか、彦星とか、お節介とかそんなのはどうでもいい。


この階段は全部で六段。コンクリートなので失敗して、大怪我をするかもしれない。


それに、いくら下が草が生い茂った芝生とはいえ、下手して打ち所が悪ければ命を落とすかも。


でも、どうでもいい。


藤本くんが躊躇っているなら、私、一人でここから落ちてもいい。


「なんだか、勝手に一人で飛び降りちゃいそうなくらい、今の藤野さんは覇気がないね。本当にいいの?」


黙って頷いた私の目の前で、藤本くんはゆっくりと車椅子から立ち上がった。


この人、足が動かないんじゃないの?


「立ち上がることは出来るよ。そういう話もした方がいい?」