きみのためのプレゼント

翔平が走ってる。あんなに走ることを怖がっていた翔平。


「実は、まだ一度も走ったことがないんだ。もう走り方も覚えてなくて」


彼はそんなことを前に話していた。足が不自由になってから、歩くことはしても走ることはできなかった。


わかる。歩行困難の足で走るなんてことは、ほとんど無謀なことだとはっきりと今はわかる。


実際、私も走ることはしていない。だから彼にとって走ることは勇気がいることだと思う。それを今、彼はしてくれている。


私の代わりにあの人を、走って呼び止めてくれている。それがすごく嬉しくて胸が熱くなって涙が溢れた。



「俺に、話があるのは君?」



溢れてくる涙を拭っていると、彼があの人を連れて戻ってきてくれた。目の前の人は、私が思っていた三浦先輩とは月とスッポンのイケメン。正直、この人なら頷けた。



「あの、ハル、岡部はるかに何か一言、声を掛けてもらえませんか?」


「俺が?」



「ハルに来てほしいって頼まれたんですよね?あなた、三浦先輩ですよね?だったらお願いです。たった一言で、いいんです。ハルに、言葉を掛けてください!お願いします」