きみのためのプレゼント

あの人のフォームが綺麗だとか、つい、力を入れて見入ってしまったり。今まで人の走りになんて一つも興味のなかった私が、人の走りにこんなにも興奮している。


そうだ、忘れてた。
陸上って魅せる競技だったんだ。



「沙織、また走りたくなった?」



あまりにも真剣に見ていた私に翔平がポツリとつぶやいた。


「うん、走りたい」


こんなにも走りたいと思える自分を今はとても好きだと思える。大好きだった陸上でどん底まで落ちて、自暴自棄になって、最悪の結論まで出そうと考えた。


もう走りたくない。そればかりが頭を過ぎった一ヶ月前。それなのに、この一ヶ月で本当にびっくりするくらいの変化があった。


足と境遇が入れ替わったことで、
『人に頼ること』を覚えて、『友達』を作ることができた。『思いやり』の気持ちを持つようにもなれて、『人を好きになる』こともできた。



たった一ヶ月でこんなにも私は、変わったんだ。本当にこの足と境遇には感謝してる。だから、私はもう迷わない。


私のやるべきことははっきりとした。