「はい。これ結果。毒殺だよ。」
 なんて犯人なんだろうねぇ、と呟く桜の言葉を軽く受け流す。
「この毒物…何で一種類だけじゃないの?量から見て一種類だけでも十分な致死量だけど…」
「僕に分かるわけ、ないじゃないか。ただ、この感じだと、自分から毒をあおったみたいだな…カルトが絡んでるね。これは」
 カルトかぁ…秘密結社とかだったら面白いけd…
「小百合の好きなタイプじゃないか?よくこういう系統の番組、観てるもんね…?」
「…うん…?えっ?な、何で知ってるの!?」
 ニヤニヤとしながら私を見てくる。
「……だって、部屋に行くたびに観てるからさぁ」
 い、いつの間に…
 私はこの時、初めてチーム単位でのシェアハウス制度を憎んだ。
 私たち、秘密捜査官は、情報の漏洩を防ぐために、チーム単位で共同生活をしている。チームは基本、5人ずつで構成されている。私たちのチームは優秀だから、4人だ。
 でも、その共同生活が私にとって裏目に出た…まぁ、良いけどね…
「まぁ、うん。ありがとう?だね。うん。」
「どういたしまして。小百合の秘密がばらしたのは謝るよ」
 笑いながら言われてもねぇ…まぁ、良いけどね。
「ま、もう今日は終業時刻だから帰ろう。僕はもう疲れた。」
 そうだね、と言って私も立ち上がった。

「あっ!た、確か今日って…零が帰ってくるんじゃ…」
「うん。そうだよ!久しぶりだよねぇ」
 零っていうのは私たちのチームの諜報員で、空野零という。桜は零のことが少し苦手という事なんだけど…
 あの二人のチームワークは秘密捜査科の中でも、最高峰なんだけどねぇ。まぁ、仲が良いんだなぁ。なんてったって両想いだしね。
「ねぇ、さーくーらー!早く帰って零にいろんな話聞こうよ!」
「さーゆーりー?僕がー、零のことがぁ、“ゆーれい”ってあだ名をつける位にぃ、嫌ってるってぇ、知ってるよねぇ?」
「うわー。桜、恐いよ?でも、二人のコンビネーションは最高なことに変わりないじゃない?ま、二人がコンビ組むことの方が少ないけどねぇ。」
 桜が言葉に詰まる。
 最後に桜と零のコンビネーションを見たのは、二つ前の事件の時だったなぁ。凄かったなぁ。

 そんな事を言っている間に私たちのチームのハウスに着いた。
 玄関は二つあるが、中で一応つながっている。部屋は六部屋あって、一人一部屋ずつある。6LDKのハウスだ。
「たっだいまー!れーいー!いっるんでしょっ!」
「もう少し静かにしたらどうだ?まぁ、相変わらずで良かったけど。」
 リビングから零が出てきた。ぼさっとしている金髪をうしろで束ね、緑色の瞳で猫目特徴的な諜報員だ。
 いつも黒のフードのついたパーカーをきている。
「おぉ?桜?久しぶりだn、ったい!」
隣にいた桜がいつの間にか零の前にいて、零の腹にパンチを食らわせた。うわぁ、痛そう…
「ゆーれいがしゃべってんじゃねぇ…」
「誰がゆーれいだ!出会い頭に腹パンはひどいだろう!」
 また始まった。本当に仲が良くて両想い…だよね?
 私は二人の横を通り抜けて、自分の部屋に向かった。
 荷物を置き、秘密捜査科の制服から、部屋着に着替える。秘密捜査科で支給される制服はそれぞれ色の違うベストに白のブラウス(男性はワイシャツ)、白のズボンに黒のループ帯をそれぞれの瞳の色と同じリングで留めるという、学生服のような服だ。
 着替えてリビングに行くと、まだ二人が言い合いをしている。仲が良いなぁ。