~1年前~
 私の名前は咲花小百合。秘密捜査官だ。
 新しい事件が起きたから呼ばれたのだが…
「平賀先輩……お願いだから、戻って来てぇぇぇぇぇ!」
 平賀先輩こと平賀三月は私のパートナーの先輩捜査官だ。綺麗な人だけど、自分の世界に入ったら戻ってこない。
 驚かせるためにメモを平賀先輩に当てないように投げたんだけど…あ、クリティカルヒット。当てる気はなかったよ?…本当に当てる気はなかったです。ごめんなさい。
「痛っ…あ、咲花さん。いつの間に。」
 平賀先輩はメモの当たった後頭部を押さえつつ振り向いた。
「いつの間にって、先刻から居ましたよ?呼ばれて一分で着きました。桜のところに居たので。平賀先輩もひどいですよ。呼んでおいて他の事に集中しているなんて。」
 ごめんなさい、と謝るのはお約束。平賀先輩の集中力は異常なほど高い。後ろでどんなに騒いでも気付かない。物理攻撃は効く。まぁ、急ぎの用でない限りこんな事はしないけど。
「それで、何があったんですか?平賀先輩。」
 平賀先輩はあぁと言って私に資料を差し出した。
「その資料を見て下さい。今回の事件なんですけど、少し特殊なんです。」
 えっ?特殊なのはいつもの事でしょう?
 心の中で突っ込みを入れつつ相づちをうつ。
「今回の事件の遺体が永久死体だったのです。」
「永久死体とは?」
「永久死体とは、永久に腐らない死体で、この事件の遺体は屍蠟化していたのです。」
「屍蠟化、ですか…確か低温多湿な場所で出来る遺体ですよね。あれ、永久死体っていうんだ…」
「はい。そろそろ野花さんの所に検死依頼が届くと。あ、あと遺体も。」
 そうですか…
 と、その時だった。勢い良くドアが開けられた。
「あぁ!なんですかこの遺体は!検死ってどうやってるんだぁ!」
 あ、桜。遺体届いたのか。あぁ、びっくりした。
「さ、桜。まぁ、落ち着いて。私も見に行くから。あと手伝うからさ。」
 平賀先輩はじゃあ、よろしくお願いしますね。と笑った。
 桜はじゃあよろしくと言って先に彼女専用の部屋に行ってしまった。
「それじゃ、行ってきます!」
 平賀先輩にそう言って、私は部屋を出て桜の部屋に向かった。