「それじゃあ、昨日出来なかった捜査会議を始めます。」
 昨日来たばかりの職場はやはり少し慣れない。
「まずは、桜、報告を。」
「はい。まず、今回の事件は一年前の事件とそっくりです。遺体の胃からは、前の事件と同じ成分の毒が検出されました。手元の資料の通りだ。」
 手元の資料にかかれた毒の成分はどれも見たことのあるものばかり。すべて一つ一つだけでも致死量だ。
「ここから推測すると、犯人はカルト集団で被害者もカルトに関わっている。そしてそのグループは」
「"server"、だろ?」
「サー、バー?なんですか、それ。」
「私達が1年前に追っていたカルト組織ですよ。」
「カルト…?」
 ダメだ。話についていけない。
「話についていけないって顔だね。serverについて俺らは復習する感じで説明してやるよ。」
 零さんが立ち上がりながら言った。
「と、その前に。ひとつ聞きたい事がある。君自身の命に関わる事だ。美琴ちゃん、なんで左目前髪で隠してるの?」
 少しドキッとした。
「これは俺の推理だけど、君は左目に、正確には瞳にコンプレックスを持っている。」
「おい、零。やめろ。」
 桜さんが静かに制止するのが聞こえる。
「…めて下さい」
「で、そのコンプレックスは」
「止めて下さい!」
 気付いたら叫んでいた。
「…ごめんなさい。零さんのおっしゃるとおりです…
私は瞳の色にコンプレックスがあります…」
 そう言って私は左目に掛かった前髪を上げた。
「私の瞳はオッドアイなんです…」
 零さん達から、冷たい目線を感じる。
 また昔のように、酷い事を言わr…
「…やっぱりね。小百合と同じだ。」
…は?
「美琴ちゃん。serverを追う上で君はひとつ気をつけて欲しい。」
「はぁ…」
「serverは、オッドアイの人間を神の使徒と考えている。また、彼らは災いの象徴としている。災いの象徴は消さなければならない。ここまでは分かるよね?」
 零さんは、静かに淡々と話す。
 冷たさが会議室の空気を少しずつ凍らせる。
「神の使徒には加護がある。しかしその加護は正義を挫くことで消え、その神の使徒を消すことができるとされている。
先刻言ったとおり、小百合はオッドアイだった。そして、君も知ってるとおり、彼女は例の事件のせいで殺された。それはつまり…」
「っ!まさか。おい、零!僕もそんな事聞いてないぞ!」
 桜さんが立ち上がって叫ぶ。その隣で平賀先輩も頷いている。
 私も背に冷たいものが走った。
「私がオッドアイだと知られたら、狙われ、かつ殺される。」
「まぁ、そういう事だ。だから、そのまま隠しておくべきだからね。」
「ちょっと待て!なんで今まで言わなかったんだ!小百合が死んだ理由を僕達に知らせないなんて!」
 桜さんが零さんに怒鳴った。
「…ごめん。でも、この情報は数日前に手に入れたやつなんだ。昨日までの潜入捜査でね。」
「零、まさか上の指令を無視していたんじゃないでしょうね?そんな事したら…」
「おいおい。三月、俺がそんな事するわけがないだろう?
仕事を早く終わらせて、上に終わってないふりをしてserverに忍び込んだんだよ。」
「…相変わらず」
「器用だねぇ。ユウレイさん?」
 三人の声は聞こえる。
 でも三人の会話が頭に入ってこない。
「…server……か……」
「あんまり考え込まない方がいいよ。僕も手助け位はする。あと、そのオッドアイには少し気になる…」
「ち、ちょっと待って、桜さん。私の瞳を研究対象にしようとしてません?」
 桜さんの目が輝いてる…
「んー。でも青と緑かぁ。左右は小百合と逆だねぇ。」
「ち、ちょっと零さん!?勝手に私の前髪上げないで下さい!」
 あ、でも、私、今凄くたのしい。
 こんなこと今までなかったからかな。
「ほら、三人共。会議の続きしますよー!」
 平賀先輩の声に三人で答え、席に着いた。