「…じゃあ、」
「う、ん、またね」
なんとなく気まずいままで別れる改札口。
それもこれも、収まらない鼓動のせい。
気づいた想いのせいだと思ってた早足の音が、不穏な早鐘に変わったのはいつだろう。
小さく手を振って、ぱっと背中を向けた私。
明日、明日はちゃんと話せるかな、話せると、いいな。
「…っ、立原!!」
「ぅえっ?!」
ぎゅっと肩にかけたリュックを握りしめて、抜けようとした、瞬間。
背中に届いた、加瀬くんの声。
『立原!!』
心を、鷲掴んで、離さない。
自覚したての恋心。
自覚したての、好きなひと。
ぐるんって勢いよく振り返る。
「なっ、何?!」
力いっぱい届くように、叫んで。
「立原、立原!また、明日なっ!」
「うん!…また、また明日ー「夕っ!」」
割り込んできたのは、鈴の音の声。
可愛くて弾むような、可憐な声。
どこか照れくさそうに、首の後ろに手を置いて、でも、まっすぐに私を見つめてくれていた加瀬くんの視線は、ふっと逸らされる。
「…凛?!」
驚いたように目を丸くする仕草も、途端ほころぶ口元も、全部全部、はじめてで。
「ひさしぶりっ!」
私の大好きな瞳に、映りたくて移りたくて焦がれたその隣に、当たり前のようにその子は、立てた。
