例えば、好きな食べ物はナポリタンで、嫌いなのはクッキー。 例えば、疲れるからスポーツは好きじゃないとか、年の離れた妹がひとりいるとか。 聞けば、淡々と返してくれる加瀬くんだけど、それ以上は、ない。 答えてくれた後、立原さんは?なんて聞いてくれたことは、一度もないし。 この前、私がなんにも言わなかったらいったいどうなるんだろう、なんて、淡い好奇心と、一抹の期待。 見事なまでに重く垂れ込んだ沈黙に、勝てなかった私の負け。 (…わからない。加瀬くんが、わからない。)