キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

「たしか、30代で会社立ちあげたんだよな? 若いのにすげぇよな」


「べつにすごくねぇよ」


「いや、すごいだろ」


今……林くん……FL社って言った……?


指先が小刻みに震えて喉の奥がキュッと詰まる。


あたしの異変に洸輝も林くんも気づいていない。


洸輝のお父さんがFL社の社長だとしたら……父を裏切ったのは洸輝のお父さんということになる。


でも、そんな偶然あるはずない。


あたしはごくりと唾をのみこんでから口を開いた。


「あのさ、洸輝のお父さんってなんていう名前……?」


おそるおそる尋ねる。


父の口からよく出てきた名前を、あたしは今も記憶している。


 『明(あきら)』だ。


もし、お父さんの名前が日向明だったとしたら――。


心臓がドクンッと不快な音を立てて鳴り続ける。


開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまうような気がして。


これ以上踏みこんではいけない。


頭の中で警鐘が鳴りだす。


ダメだ。やめておこう。今ならまだ引き返せる。


これ以上聞かないでおこう――。