キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

「――パパ」


近くにいる家族連れ。女の子の声に思わず視線を向ける。


楽しそうに笑う父と子。その隣で微笑む母。


あたしにもこんな頃があったんだ。


でももう、こんな日々は二度と帰ってこない。


もう父に会えない。


もう父としゃべれない。


もう父の声を聞けない。


もう、あたしは――。


「花凛」


「……え?」


「どうしたんだよ。笑ってたかと思えば今度は泣きそうな顔してるし」


洸輝があたしの顔をのぞきこむ。


洸輝と一緒にいるのにボーっとするなんて失礼だ。


「ごめんね、なんでもない」


謝ってから再びドリアを口にする。


「なんかあったら、あんま溜めこまずに言えよ?」


「ありがとう」


くすぐったい気持ちが体中に広がる。


味わったことのないその感情がなんなのか、このときのあたしはよくわからなかった。