キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

「ごめんね。ぜんぜん気づかなかったよ」


「マジか。俺はすぐ花凛だって気づいたのに」


さっき泣きそうになっていたの、洸輝に見られていないよね……?


おそるおそる洸輝の顔色をうかがう。


「ん?」


「ううん、なんでもない」


よかった。やっぱり見られていなかったんだ……。


普段と変わらない様子の洸輝に、ほっと胸をなでおろす。


「ねぇ、洸輝はなんでここにいたの?」


「あぁ……べつに。たまたまヒマでブラブラしてただけ。花凛は?」


「あたしもそんな感じ……かな?」


なんとなくそうごまかすと、洸輝はニッと笑った。


「つーか、今ヒマなんだったら飯いこうぜ」


「ご飯?」


「そう。もう食った?」


「ううん、これからだけど……」


「じゃあ、決定。花凛なに食いたい? このあたりなんもないし、駅のほう行くか」


洸輝はさらっとそう言って歩きだす。


ご飯……って、ふたりで行くってことだよね?


休みの日に、洸輝とふたりっきりでいることすら信じられないっていうのに、一緒にご飯?


なんだかハードルが高い。


もし、洸輝と一緒にいるところを学校の女子に見られたら、大騒ぎになりそうだ。


「花凛? どうした?」


「あぁ、うん。ごめん、今いく!!」


ついてこないあたしに気づいて、振り返る洸輝。


あたしは小走りで洸輝の隣まで行くと、そろって歩きだした。