キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

「花凛、ごめんね。お母さん午後から仕事が入っちゃって……。ここに来る前にパート仲間の娘さんが熱を出しちゃったって連絡が来たの。だから――」


そっか。そういうことか。


「そっか。それなら仕方ないね。また今度にしよう?」


あたしはニコッと笑って答えた。


言いづらそうな母の代わりに、自分の気持ちをぐっとこらえる。


「でも、買い物に行きたかったんじゃないの?」


「いいの。急ぎじゃないから。あっ、仕事行くならここで別れたほうがいいよね? あたし、誰か友達誘って一緒にご飯食べるから気にしないで?」


「ごめんね、花凛。今度の週末は休みとるからね。そしたらどこか――」


「あっ、友達から電話来た!! じゃあ、お母さんまたねっ!!」


鳴ってもいないスマホを取り出して、母に背を向けて走りだす。


これでよかったんだ。


あたしが我慢すればみんながうまくいく。


母が見えなくなるところまで走り、立ち止まって呼吸を整える。


でも期待していた分、少しだけ悲しい。


急に目頭が熱くなる。


ぐっと唇を噛んで我慢しようとしたとき、突然手もとのスマホが震えた。