その言葉の意味がわからず、さらに困惑する。
特別っていったいなに?
「日向くんそれどういう――」
「洸輝」
「え?」
「また名字で呼んだ」
「あぁ、ご、ごめんね。えっと……」


あらためて呼ぼうとすると、なんだか緊張する。


男の子のことを名前で呼ぶのは初めてだから。


「こう……き」


「そう。今度名字で呼んだら罰ゲームな」


「えっ!? どうして!?」


「よし。教室戻るか」


ニッと意地悪な笑みを浮かべる日向くん……洸輝はやっぱりカッコよくて。


どうして、こんなにカッコいい人があたしなんかを構うのかぜんぜん理解できない。
もしかして、からかわれてる……?


「――花凛、いくぞ」


ぼんやりしていたあたしの手を洸輝がつかむ。


名前を呼ばれて手を握られただけなのに、全身に電流が走る。


甘酸っぱい感情が胸の中に込みあげた。それは今まで感じたことのない、言葉では言いあらわせない不思議な感情だった。


「う、うん!」


あたしは大きくうなずくと、洸輝に手を引かれて屋上をあとにした。