「当たり前って思ってることが、当たり前じゃないんだよな」


「え……?」


「ずっと続いていくって思ってたことが、突然終わりを迎えることもあるってこと。でもきっと奥山のお父さんも幸せだと思う。今もこうやって思い出して泣いてくれる娘がいて」


日向くんは優しいまなざしであたしを見つめながら、頭を優しくなでてくれる。


よくお父さんもこうやってあたしの頭をなでてくれた。


『花凛』


低い声であたしの名前を呼んでくれた。


今もまだ、あたしはその声を色あせることなくハッキリ覚えている。


「いろいろつらいことがあったんだな」


日向くんの優しい声にさらに涙腺(るい せん)がゆるむ。


「……ごめんね。急に泣かれて日向くんも困るよね」


しんみりしてしまった場を明るくしようと、笑いながらゴシゴシと涙をぬぐう。


すると、突然ふわっとなにかが体を包みこんだ。


「無理して笑うなって。泣きたいときは泣けよ」


日向くんはあたしの体をギュッと抱きしめてくれた。


「ありがとう……日向くん……」


あたしは、日向くんの脇腹のシャツをギュッと握りしめて泣いた。


日向くんはあたしを抱きしめながら、片手で頭をなでてくれる。