キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

『なにあれ、最低! ちょっとあたし文句言ってくるから』


うちの家庭事情を知っている京ちゃんが、怒って腰をあげようとしたとき、


『お前ら、親のありがたみわかんねぇのかよ。いるのが当たり前じゃねーぞ』


今までずっと黙って話を聞いていた日向くんが、口を開いた。


その言葉に、あたしに向けられていた冷たい視線がいっせいに日向くんに向けられる。


思わずあたしも日向くんに視線を向けた。


『おいおいおい、洸輝、お前そういうキャラだっけ?』


ひとりの男子が茶化すように笑うと、無表情だった日向くんはニッと笑った。


『そういうキャラ。俺、マザコンだから』


そのひと言に、その場にいた全員がゲラゲラと笑いころげる。


『ちょっと、洸輝ってば~!! 自分のことマザコンとか言うってありえないって~!!』


『でも、洸輝の母ちゃんってめっちゃ美人っぽくね? 料理もうまいし最高じゃん』


『あ~、わかる~!! 絶対美人だよね~。洸輝からなんとなく想像できるし』


『つーか、洸輝んちって父ちゃんは社長だぜ?』


『え~!! マジで~? すごくない?』


日向くんのひと言で場の雰囲気が変わり、彼らの意識があたしからそれる。