キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

『お父さん、今日は風が強いよ』


『今日ね、席替えしたんだよ』


『給食でシチューがでたの! おかわりまでしちゃった』


『今日ね、友達と宝探しをしたんだよ』


その日にあったとりとめのない話を、あたしは延々と繰り返した。


『花凛は宝物探しが好きだね』


父はあたしの話を聞きながら、カサカサになった唇を動かして相槌を打ってくれた。


『うん! 大好き!!』


『じゃあ、今度父さんもなにか隠してみようかな』


『いいよ。花凛、すぐに見つけちゃうから!!』


あのとき、どうしてあんな話ばっかりしていたんだろうって、今になって思う。


もっと言いたいことがあったんだ。


もっと伝えたいことがあった。


『お父さん、大好きだよ』


『ありがとう』


もっと、自分の気持ちを素直に父に伝えればよかった。