キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

『もう一度、働かせてくれないか?』


『どんなことでもやる。だから、頼む』


一緒に会社を立ちあげた親友に、何度も電話をかけていたのをあたしは知っている。


けれど、父の親友が首を縦に振ることはなかった。


それから、父の容体は悪化していった。


末期のすい臓ガンだった。


生きがいだった仕事を取りあげられたからか、それとも急激に病状が悪化したのか、今となってはわからない。


徐々に食欲がなくなり、薬の副作用で食べられるものが減り、痛みが強くなり、薬の量ばかりが増えていった。


体はむくみ、顔色は悪くなり、寝ている時間が増えた。


弱っていく父の姿を間近で見るのはつらかった。


父のためになにかをしてあげようと思っても、あたしは無力で。


父の手を握りしめて声をかけることしかできなかった。