キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

『最近、調子はどうだい?』


『いや、それがマジ大変なんっすよー』


『うんうん。どうした?』


お兄さんと父の会話をあたしは黙って聞いていた。


親しげに話すふたりの空気は温かくてやわらかかった。


父が目指していたのはこういうことなのかもしれないと、幼心に感じた。


父は人と人とのつながりを大切に思っていた。


きっと、お兄さんともなにかをキッカケにつながったにちがいない。


年も住んでいる場所も環境もちがう者同士でも、こうして打ち解けあうことができる。


『奥山さんがいなかったら今の俺はここにはいないから。マジ、ありがとうございます!』


あたしと父に手を振って去っていくお兄さんの笑顔に、あたしまで温かい気持ちになったのを覚えている。


『お父さんはどうしてそんなに仕事をするの?』


毎日仕事に打ちこんでいる父に聞いたことがある。


どうしてそんなに仕事をがんばっているのかと。


すると、父はキラキラとまぶしい笑顔を浮かべながら答えた。