キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

「……りん、花凛ってば」


「えっ?」


「ちょっとー、どうしたのよ。急に黙るからビックリしたよ」


ハッとして顔をあげると、京ちゃんと日向くんが不思議そうな顔であたしを見つめていた。


「ご、ごめん!! あたし、ちょっとトイレ行ってくる」


そう言って立ちあがると、あたしは逃げるように教室を飛び出した。


もう5年も前のことだというのに、いまだに父のことを思い出すと痛いほどに胸が締めつけられる。


父は30代で転職し、学生時代からの親友と地元にFL社という小さな会社を立ちあげた。


地元の名産品や農作物などを、様々な方法で全国に宣伝し、販売していた。

また、町おこしの一環として観光名所のPRも積極的に行っていた。


父は生まれ育ったこの町が大好きだった。


『どこかへ旅行に行っていても、地元に帰ってくるとホッとする。ここは俺の居場所だ』と口癖のように言っていた。