1年のときは同じクラスじゃなかったし、彼とかかわりを持ったことも、もちろん言葉を交わしたこともない。


そんな彼がどうしてあたしの名前を知っていたんだろう。


あたしって単純。


ただそれだけのことで、ちょっぴりうれしくなってしまった自分が情けない。


「う、うん。えっと日向(ひゅうが)くん……だよね?」


彼の名前を知らない人は、たぶん校内に誰ひとりいないはず。


うれしさがバレないように装ってそう尋(たず)ねると、彼は笑顔を崩すことなくうなずいた。


「俺の名前知っててくれたんだ?」


「知らない人のほうが珍しいと思うよ」


「いや、そんなことないだろ」


机の横に学校指定のバッグをかけて、椅子に座ってあたしのほうに体を向ける日向くん。