キミを想えば想うほど、優しい嘘に傷ついて。

『今日だけ限定で新しいパンが入るって。限定5個』


『そうなの? 知らなかったなぁ。でも限定5個じゃ買えなそう』



お昼になると、お目当てのパンを買うために生徒たちがいっせいに購買目指して走る。


走るのは昔から苦手だし、前列にいる男子の先輩たちを押しのけてパンを……しかも限定5個のパンをゲットするなんてできそうもない。


だから、いつもみんなが買い終わって売れ残ったパンから選んでいる。


『オレが奥山の分も買ってくる』


その文字にドキッとする。


『あたしの分は大丈夫だよ! ありがとう。なんかこういう風に手紙交換するのって小学生以来だよ』


照れ隠しでそう書いて話をそらすと、意外な展開になった。


『だよな。スマホで連絡とりあえるしな』


『そうだね。スマホがあれば手紙いらないもんね』


『つーか、奥山の番号教えてくんない?』


え……。


思いがけないことに紙を持つ手が小刻みに震える。