「君が、五十嵐さん?」
「え?」


突然、左から声が聞こえた。


「…広瀬春樹」
「フルネーム呼び?名前でいいよ」


驚いて思わず名前を呼ぶと、クスクスと笑った転校生。



「じゃあハルって呼ぶ」
うん。こっちの方が呼びやすい。


「ハル、か。いいよ」
「ハルに許可貰わなくても、勝手に呼ぶつもりだったよ」
「なんだそれ」


あ、また笑った。


「ひな、もう転校生口説き?」
「は?違うよ!話してただけじゃん!」
麗ちゃんが茶化すように聞く。
「どう考えてもそれはないだろ」
「だな。向夏みたいなお子様には無理無理」
佑都と健ちゃんはあたしを馬鹿にしとんのかっ!!


ダメだ。腹立ってきた。


「健ちゃん…顔貸し?」
「は?ぅわっ!!おい向夏やめろ!!」
「やめる?何言ってんの。一発殴らせろ」
「嫌だわ!!おい、麗華!佑都!こいつ止めろ!」
「なんでうちらが止めなきゃいけないのよ」
「元は健介、お前が悪い」
「人でなし!!」


健ちゃんの胸ぐらを机越しに掴んで、左手に拳を作る。
眉間に皺を寄せたまま笑顔を作ると、焦り出す健ちゃん。
麗ちゃんと佑都に助けを求めたものの、あっさりと見捨てられた。


残念。どんまい健ちゃん。


「ぎゃー!!向夏、マジ顔はやめろ!!」
「嫌!覚悟しな!!!」