「あ、いたぁっ!」

「っ、あ?」


 今、この剣道場では聞きなれない声がしたよな。

 俺は、声の方を向いた。

 近くの出入り口から姿を覗かせていたのは……


「ゆ、湯川っ?」


 えっ!? 何でこんなところに湯川が来たんだ!?

 考えていたら現れるって、そんなの不意打ちだろ!

 よく見ると、手にはスケッチブックを抱えている。


「あのー……猪瀬。ちょっと、いい?」

「えっ? お、俺に用?」


 湯川は、笑みを浮かべてコクンと頷いた。


 な……何だ? 一体何だ? この急展開は。

 どうしてあの湯川が、俺に用があるんだ?

 よく状況が理解出来ないまま立ちあがり、湯川の前へと向かった。