たとえばあれが、まったく関係のない、事務連絡で話す程度のクラスメイトだったら。そのレベルの、知り合いだったら。それはそれで嫌だけれど、朝からここまでイライラすることもなかったのではないかと思う。

「ほんとかわいいよね、ナナちゃん」

「えー?」

 教室の片隅から聞こえる、甘ったるい声に甘ったるい会話。2年生になってクラス替えをしてから、恒例の光景になっている。

 ……いや、朝からこんな光景、当たり前にしたくないんだケド。

 ちなみに、奴の口から吐かれる名前が3日と同じだったことはない。よくもそんなに女の子がいるものだと、変なところに感心してしまいそうになる。

 そんな会話を聞きつつ、手元の英単語テストのプリントを眺めつつ。少しずつ教室に人が増えて、忙しなく、賑やかしくなっていくのを感じる。

 いつもと同じ、朝。

「おはよ、綾香(アヤカ)」

 ホームルームがはじまる、10分前。こうして声を掛けてくる莉菜(リナ)も、いつも通り。