声を掛けてくれた学生は普段、教師からも学生達からも煙たがられている連中だった。


「頑張れよ」


「あ、あありがとうごご、ございます」

一礼して裏門へ走り、住宅街へ抜け坂道を下り、何とか報道陣をまき、駅から電車に乗り込み楽屋入りした。


「和音、大丈夫だったか? 俺らも危うく捕まるところだった。学校、処分はどうだった?」

拓斗が早々に訊ねた。

俺は手話で事の次第を伝える。


「合唱コンクールのピアノ伴奏、ったく客寄せパンダじゃねえか」

側で聞いていた奏汰が苛ついた口調で言う。


『拓斗、奏汰。俺、今度のライブで喋れないこと公表したい。逃げてばかりでいたくない』


「公表って、お前が弁明してたら歌う時間無くなっちまう」

奏汰は舌打ち混じりに俺を睨む。


『ライブ、七夕ライブ。ファンの前で騙してたこと、謝罪したい』