拓斗は俺の顔を見て「バカ」と呟き、奏汰に合図し病室を出た。

言いたいことは幾らでもあるだろうにと、済まない気持ちでいっぱいになる。

翌々日、退院した俺。

登校した俺は明らかに今までとは違う学生の反応に、面食らった。

登校早々、学長室へ呼び出され、伝えられたのは退学処分でも停学処分でもなかった。

コーラス部顧問と部長が学長室に居た。


「お咎めの代わりに、合唱コンクールのピアノ伴奏をしなさい」

学長が合唱コンクールの横浜大会結果を見ながら話す。


「横浜大会は君のピアノが伴奏者賞だったそうだね」

俺は首を傾げ、顧問と部長の顔を交互に見る。


「あなたの実力には驚いたわ。あなたのピアノ伴奏でなければ、県大会進出はできなかったわ。指揮をしていて心が躍ったの。歌いたいと心底思ったの」

部長が頬を紅潮させている。