「ねえ、綿貫和音に似てなかった?」


「そう?」


「今日ここで、LIBERTEがライブのリハーサルなんだって」

そんな会話も聞こえてくる。

和音くんの制服のポケットから、またブルブルと音がした。


「さっきから何度も着信音が鳴っているけれど、出なくていいのかな?」

仁科副部長が訊ねる。

和音くんは膝を立てたまま、激しい咳と息切れで喘ぐように息を吐く。

「君、もしかして喘息?」

胸を押さえた和音くんはコンクールのスタッフに訊ねられ、フルフルと首を振る。

和音くんの制服のポケットが、またブルブルと鳴り、階段を慌ただしく駆け下りてくる数名の足音が響いた。

黒いスーツ姿の男性とジーパンを着て髪に数色メッシュを入れた若い男性が、ロビーを見回す。

彼らには見覚えがあった。

「キャー」という歓声で、ロビーが騒がしくなる。