有り得ないくらいドヤ顔だった。

――デュオ「Soleil」はアメリカでトップクラスの人気を誇るアーティストで、超絶技巧曲ばかりを演奏する

それだけでも、ドキドキなのにと思う。

「和音くんがいくら音楽科で優秀な学生でも『Soleil』には到底、及ばないのでは」と言うと、副部長はフンと鼻で笑った。

「アイツの師事しているヴァイオリンの師匠は世界中で、最も卒業が難しい音大と言われるスイス、バゼール音楽大学の卒業生だ。ジュリアード音楽院の卒業生ごときに負けるわけがない。卒業試験は市庁舎前でのコンサート、教授が認めても聴衆の拍手が足りなければ不合格というルールがある」

「そんな厳しい音大があるんですか?」

「うん、ジュリアードの首席クラスでも落第すると言われるくらいハイレベル」

「和音くんがどんな演奏するのか、聴きたいです」

「それは無理だ。チケットは立ち見席まで売り切れ」