「体力も筋力も落ちてて、リハビリが始まったばかりで、外出許可も主治医が渋々出したくらいだ。あんなに暗い顔した和音は初めて見る」

「あたし……当日、誕生日なの。Aliceがあたしの歌を聞いてくれたら、少しでも元気になってくれたら。他に何にもいらない」

奏汰が病室で明るく振る舞っていたのは、空元気だったんだと思う。

「そうか、わかった。全国大会の会場が横浜で良かった」

そんなに体力が落ちているんだと思うと辛かった。

全国大会当日、あたしたちコーラス部員は朝9時にみなとみらい線日本大通り駅近くにある会場に集合した。

全国の各地方大会から勝ち上がってきた、九州、四国、中国、関西、中部、東京、関東、東北、北海道の9支部から精鋭2校ずつ計18校が競う。

あたしたちは午後の部、最初の出番で昼休みを挟み、1時から歌う。

午前の部の終わる1時間前に会場を出て、近くの山下公園で小腹を満たし、発声で喉を温めた。

12時半、会場に戻ると和音くんが拓斗と奏汰それに看護士も付き添って、車椅子でロビーに入ってきた。