俺の胸の内に、まともに喋れないコンプレックスが、いつも引っかかっていた。

親兄弟や友人、一緒に歌っている拓斗や奏汰にも言えない思いがくすぶっていた。

あの日、遊園地のライブで花音が俺を庇って「和音くんが歌を作って歌うだけしかできないみたいに」と、声を張り上げてくれた時、悶々としていた胸の奥で何かが弾けた。

――このままじゃいけない。喋れないことに甘えてちゃいけない

自分の殻に閉じこもっていた俺自身の弱さに気づいた。

俺が勇気を出して、自分の殻から本気で出ようとしていなかったことに気づかされた。

花音が大切なことに気づいていなかった俺自身の弱さを気づかせてくれた。

――大切なものは自分自身の内にある。自分なんだ。全て自分の気持ちが原因なんだ

花音が逃げてちゃいけないことを教えてくれた。


課題曲「大切なもの」の歌詞が胸にビンビン響いた。