思わぬ体調不良が続き、今日のピアノ伴奏も危うい状態だが、それでも今日までは何としてもピアノ伴奏をすると決めている。

聖奏の合唱が終わるまで、断じて倒れるわけにはいかない。

ペットボトルの水で渇いた唇を湿らせる。

ゆっくりと1口、喉に水を送る。

自分自身に大丈夫だと言い聞かせる。

場内アナウンスが流れ、俺たちの前の学校が舞台に上がり、歌い始めた。

後戻りはできない。

花音が俺を心配そうに見つめている。

隣で尾崎が不安気に「ちゃんと最後まで弾いてください」と、目で訴えている。

仁科が俺の肩を叩き「本当に大丈夫か」と訊ねる。

花音から俺の体調不良を聞いているんだろう。

俺はコクリと、ゆっくり頷く。

――県大会突破してやる、俺のピアノ伴奏で必ず


気合い十分だった。