綿貫和音はあたしの手を握り、優しく引き上げた。


――ありがとう、嬉しかった。ライブ聴いて。俺、一生懸命歌うから


綿貫和音は、満面の笑みで、着ぐるみを着たあたしの掌を上に向け、ゆっくり文字を書く。

――ウサギちゃん、名前教えて


「花音、小日向花音(こひなたかのん)」


――今日は俺、花音のために歌う

綿貫和音はギュッとあたしの肩を抱きしめた。

暖かかった。

心が羽毛で包まれたみたいにポカポカ暖かかった。