「・・・ハクトくん、だっけ?」
僕は少しドキッとして、「は、はい。」と答えた。
「珍しい名前ね。どうやって書くの?」愛子のお母さんは優しく聞いた。
「し、白に北斗星の斗です。」
「へ〜、面白いね。」彼女は微笑んだ。「愛子と仲良くしてくれてありがとね。最近、あの子すごくいい子になったの。前まで喧嘩ばっかだったんだけど、近頃は全然。多分白斗くんのおかげだね。」
僕は、「いや、そんな。」と言った。
「あの子、恥ずかしがり屋だけど、お願いね。白斗くんみたいな行儀のいい子だったら私も安心だわ。」そして彼女はフフッ、と僕に微笑んだ。
愛子の予想通りだ。本当に勘違いしてしまったようだ。
でも僕は黙って、その間違いを直そうとしなかった。さっき自分が言ったように、完全に間違っているわけでもないから。
それに、早くそうなってほしいと僕自身も思っているから。
今は嘘でも、未来では本当になることだと信じたい。早くこの生活から抜け出して、ちゃんと就職して、愛子ときちんと付き合う。
それが僕の望みだ。
階段を下りる足音が聞こえてきた。そして、リビングのドアが開いた。
「お母さん、余計なこと言ってないよね?」愛子はキッチンに向かって言った。
愛子のお母さんは笑顔で、「大丈夫、言ってないよ。」と言った。

