「なんだ。あんた鍵持ってんじゃん」

「……」

無視かよ…。

まぁいいや。

私はしぶしぶ、本を拾い開けてもらったドアから図書室に入る。


木と本の匂いがする。


「黒瀬って図書委員なの?」

「違います」

図書室の電気をつける黒瀬ははっきりとそういった。


初めて聞いた声は低くて、でも通る声で。
声だけは良い。

「じゃあなんで鍵持ってんの?」

「わざわざ説明しなくちゃいけませんか?」


なにその言い方。

ムカつく。

「べっつにーーー」
と皮肉れる私。


黒瀬はまるで図書室のすべてを知り尽くしてるかのように、スタスタと一つの本棚に向かってさっと一冊の本を取り出す。

黒瀬は基本いつも1人でいる。
クラスから孤立してるというか、自分からみんなの輪に入ろうとしない。

女子からは、暗くてキモいとかガリ勉とか言われて基本嫌われている。

私だってその1人だ。

スポーツが出来て、かっこよくて、面白い男の子が好きだもん。


「黒瀬、いつも来てるの?」

「答えなくちゃいけませ…」

「いいですよーーだ!聞きません聞きません!じゃ、これここに置いとくから片しといてね」

なんなのよこいつ!!
コミニュケーション取ろうとか思わないわけ?



私はムカついて、歴史の本を貸し出しカウンターにドンっと置いて、さっさと図書室を後にした。

ふんっ!

2度とこんな奴と関わるもんですか!!