「僕は…何度も…何度も何度も断ったんだ…」


「……」
「黒瀬…」

黒瀬の声が震える。


「でも…どうすることもできなくて……」

「……」

和田くんは私から体を離す。

「お前に…すばるには本当に嫌な思いさせて悪かったと思ってる…でも…言い訳になるのかもしれないけど…無理だったんだ。怖くて…。信じてほしい…」


黒瀬…。
頑張ったね。

「…言えんじゃん。ちゃんと」

「え…」

和田くんは、しゃがみこんだ黒瀬に歩み寄って、優しくそういう。


「お前とあいつのことよりも俺は、信じてほしいって訴えてこないお前に信頼されていないんだって感じてた。それにすげームカついたんだよ」


「我慢強いのは黒瀬のいいところだけど…でも親友になら素直に自分の気持ち話してもいんじゃない?」


「…水谷さん」

「お前が人の大切なもの傷つけないことくらい、本当は俺が一番わかってたよ。だから、俺にだけは、俺の彼女だったからこそ、本当のことを言って欲しかった」


「…すばる」

「学園祭の時だって、すげー殴ったのに、絶対言わないんだもんな。俺は悪くない被害者だーって」

和田くんは黒瀬の肩をガシッと捕まえると、黒瀬を立たせた。


「ありがとう。本当のこと言ってくれて。ごめんな、傷つけて」


和田くんはそういうと、黒瀬の肩を強めに叩いた。