結局、彼女たちは一向に黒瀬から離れようとしないので引き返して、トボトボ廊下を歩く私。
「はぁ…」
恋愛でこんな思いするなんて思ってもみなかった。
私が好きになれば誰でもイチコロだって。
そう思ってた。
こんなの全然描いてた恋愛じゃない。
黒瀬だって、あんな風に女の子に囲まれちゃ誰かのものになることだって時間の問題だ。
本当、私ってなんなのよ…。
気づけば、図書室と教室をつなぐ渡り廊下の真ん中で立ち止まって、涙をこらえていた。
最近すぐに泣いちゃうし。
全部全部、黒瀬のせいなんだから。
奴が…惚れさせるようなことするから…。
「黒瀬のバカっ!」
思わず声に出してしまう。
「僕がなんですか?」
え?
低くて通る綺麗な声。
一番最初に胸がなった瞬間を思い出す。
私は声のした方をゆっくり振り返った。
「廊下のど真ん中で元学年最下位にバカ呼ばわりされるなんて心外です」
「うぅ…黒瀬…なんで…」
そこには爽やかな顔がよく見えるようになった黒瀬がいた。
「なんでって…会いに来たのは水谷さんの方でしょ?…あれで隠れられてるつもりですか?」
うぅ。
気づいてたんだ…黒瀬。
「…だって…黒瀬、忙しそうだったから。邪魔しちゃ悪いかなーって思ったの!フンッ」
「なにイライラしてるんですか?」
「はぁ?別にしてないし!」
「水谷さん、顔にすぐ出るんですから嘘つくだけ無駄だといつも言ってるじゃないですか」
「うるさいっ!大きなお世話ですー!」
こんなことが言いたいわけじゃないのに。
どうしてけんか腰になっちゃうんだろう。
「…それ」
「あ…」
黒瀬が私が両手に抱えてる紙袋に目を止める。
「これさっさと返そうと思って」
ぶっきらぼうにそういって、私は目をそらしながら紙袋を黒瀬に渡す。
「あぁ、どうも」
「……」
メガネの黒瀬じゃないとなんだかぎこちなくなる。



