「ママもね、職場の上司だったパパのこと好きになって、初めはありえないって思ってたのよ?もともと嫌いだったし」
「え!そうなの?」
初めて聞いたママと私が生まれてすぐに死んだパパの話。
「顔はすっごいイケメンなのに愛想が全然ないもんだから、周りの同僚はかっこいいなんて騒いでたけどママは大嫌いで」
「そうなんだ…」
ママとダイニングテーブルで向かい合いハーブティーを飲みながら話す。
「でもある日の飲みの席で、パパの隣だったママがパパのスーツにビールを盛大にこぼしちゃって」
「わぁ…」
「周りのみんなは気づいてなくてママだけ慌ててすーごい謝ったの。一応上司のスーツ汚しちゃうなんてアレじゃない…でもその時…パパ自分で自分のジョッキに入ったビールをもっかい自分のスラックスに盛大にぶっかけたの」
「え!?」
「それでまるで自分がこぼしちゃったかのように『滑ったわー年だな』って男性陣と笑ってくれて…それで、もうパパの虜よ」
「パパ、イケメン」
「ねー、愛想ないのは誰にでもいい顔する男より全然マシだって気づいたし、事故で亡くなるまでずっっっとママのこと愛してくれたわよ」
初めて聞けたパパとママの話。
今までママはパパの話はあまりしてくれなかった。私が聞かなかったからかもしれないけど、ずっと心のどこかでパパのことを聞くのは申し訳ない気がしていた。
でも、今日初めて聞けた。
すごくあったかい気持ちになる。
「梨子も素敵な人と出会って、いつか素敵な家庭を築けたらいいわね」
ママは少し照れ臭そうに笑ってからハーブティーを一口飲んだ。
近いうち、黒瀬にちゃんと気持ちを伝えよう。
私はそう決心して、またハーブティーをすすった。



