「好きになるはずないって思ってた男の子のことを好きになっちゃって…」

「うん」

「でもその気持ち隠すために自分のこと好きな子のこと利用した…今になってすごいひどいことしてるって気がついて…」

「うん」

私は話しながら涙を流す。

「こんな私が人のこと好きになっていいわけないって…幸せになっちゃいけないって思って…でも…もう…好きだって意識しちゃったとたんダメで……」

こんな話を自分からママに話すなんて、自分が自分で信じられない。

うまく言葉にできない私の話しにママはずっと耳を傾けてくれて優しい顔をして聞いてくれた。


「…最低だよね…私…」

「…梨子」

ママは握っていた手を少し強く握りなおすと私の名前を呼んだ。


「…なに?」

「いい?生きるってことは必ず誰かを傷つけるものなの。それでも誰も完ぺきな人なんて誰もいないから、許し合うことをお互いが大切にしなきゃいけない。それをまず忘れないで」

「でも…私のしたことはひどすぎるよ…」

私がそう小さく吐くとママはキラッと目の色を変えた。

「いい?振った男のことをクヨクヨ考えたって時間がもったいないだけよ。何?梨子はその付き合ってた彼がずっと自分のこと好きだって思ってるの?」

「へ!別にそんなこと…」

「いいえ、思ってるわ。だからそうやってかわいそうかわいそう私ってひどい私ってひどいって思ってるのよ。今の梨子は自分の行動に後悔してるっていうより、自分にふられた元彼に同情してるようにしか見えない」

ママの猛攻撃に私は思わず固まってしまう。

「ちゃんとお互いが話し合って決めた答えならその道に進んで行くしかないじゃない」

「ママ…」


ママの言葉で少し気持ちが楽になって行く。

「どんなに今自分を責めたって過去は変えられないの。だったらさっさと立ち上がって歩いた方がいいじゃない」


「うん…」

「何があったってママは梨子の味方よ?その彼だってすっごくいい男の子なんでしょ?梨子が付き合ってもいいかな?って思う相手だもん。落ち込んじゃうのはわかる。でもね、ママは葵くんだと思うわよ!」



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