「莉子…!何してるの…電気もつけないで」


どのくらいの時間そうしていただろう。

リビングダイニングの明かりがつき、ママの声がしてハッと我にかえる。


「あ…ママ…」

仕事から帰ってきたばかりのママが私の姿に驚いている。


「制服も着替えないで…学校でなんかあったの?」

ママが私の正面に座ってそう聞く。


マコトくんのうちから帰ってきて、それからずっとぼーっと考えてた。


この気持ちをどうしていいのかわからなくて。


「…ママ」

私は小さくそうつぶやく。


「なぁに?」
優しくそう聞くママ。


ママの声を聞くと、なんだか少し落ち着いた。


「あのね…ママ……」

うまく言葉が出てこない。

「いいよ。ゆっくりで。ゆっくりでいいから、全部話してごらん」

ママは私の手を両手で握ると、優しい笑顔で微笑んだ。

まるで何があったのか全部わかっているみたいな、落ち着いた顔をしている。


「うん…あのね…」