少し短くなった黒瀬の後ろ髪を見つめる。
頑張ったんだろうな。
黒瀬にとってすごく勇気のいることだっただろう。
孤独になるのことも、そして今、自分から殻を破ることも。
「いいと思うよ!!!」
黒瀬の背中にそう叫ぶ。
黒瀬に少しでも自信をつけさせたい。
また、あの時のように笑ってほしい。
黒瀬はゆっくりこちらを振り返った。
!!!
ん?!
そして、こっちに向かって歩いてくる。
聞こえなかった?
それとも何か怒らすこと言った?
「な、なに?!今のまずかった?一応、褒めたつもりなんだけど…」
私が慌ててそう言うと、黒瀬は無言のまま自分の巻いているマフラーを外し始めた。
「え、黒瀬?……わっ!」
黒瀬が突然、私の首に自分のマフラーを巻き始めた。
な、なにしてんのよこいつ!!
校舎から出てきた生徒も増えてきてるっていうのに。
「ちょ、黒瀬…」
「初日の出の時もそうですけど、水谷さん、わざとですか?それとも寒いのがお好きなんですか?」
「え…」
そういえば、あの日も黒瀬から上着借りたっけ…。
「別に好きっていうか…慌てて家を出たから…」
そう。今日はたまたまマフラーを忘れてしまった。
「もっと、女という自覚を持った方がいいですよ。まぁ、それが意図したものなのかどうかは知らないですけど。では」
「へ、ちょっ…」
黒瀬はあっという間にマフラーを巻くと、さっさと前を歩いて行ってしまった。
私は今の状況を整理するのが精一杯で、体が固まってしまう。



