「黒瀬!!」
放課後、いち早く校舎を出た黒瀬を呼び止める。
「…水谷さん」
振り返った黒瀬は走ってやってきた私を見て少し驚く顔をする。
「あ、あんた、どうしたの…その…メガネは」
「自分の殻に閉じこもってちゃダメだなって、水谷さんに初めて自分の気持ちを話してから、そう感じたので」
そう私の目をまっすぐ見て話す黒瀬はいつもとは違うから思わず目をそらしてしまう。
普通のイケてるメンズじゃんか。
「メガネは…人との距離を少しでも離したかったので、あえてつけていました。それじゃダメかなと」
「へ、へ〜。ん?ってことは、あんた…視力…」
「1.5です」
「私よりいいじゃん…」
長かった前髪も、黒縁メガネも、黒瀬にとっては人との距離を遠ざけるための道具だったんだ。
「変…ですか?」
!!!
メガネなし黒瀬が顔を近づけてそう言ってくる。
「ちょっ…ち、近い…」
「フッ…」
黒瀬の意地悪な笑みが浮かぶ。
「何笑ってんのよ…」
「ズルいですよね、水谷さん」
「は、はぁ?」
黒瀬はくるっと前に体を向き直すと、門へと足を動かした。



