「これも…ドキドキしましたか?」
「ふ、ふざけないでよ!!!」
どうして黒瀬は。
どうして、こんなことするのよ。
変にドキドキさせるようなことばっかり。
「ちょっとすっきりしました」
「え?」
「今まで、誰にも言えずにいたので…昔のこと」
そっか、黒瀬ずっと苦しんでたんだ。
だから、誰かを傷つける前に人から距離を置いていてクラスから孤立してたんだ。
初めて聞いた黒瀬の本当の気持ちを、黒瀬の口からしっかり聞けた。
やっと。
「私でよかったら…いつでも聞くから」
聞くことしかできないけど。
黒瀬の重荷が少しでも軽くなるなら。
何度だって聞くから。
「頼もしいですけど…また勉強見てくれとか頼まれそうなので、遠慮します」
「はぁー?!あんたねー!人が優しかったらそうやってすぐ調子乗って〜〜!」
私は黒瀬の腕を軽くポカポカ叩く。
「フッ…嘘ですよ。ありがとうございます」
「え…」
ドキン
私は思わず目の前の黒瀬をじっと見てしまう。
だって…。
すごく笑ってるから。
二回目だ。
写真の頃と合わせて、黒瀬の笑顔。
二回目。
いつもの意地悪な笑みじゃなくて、無邪気に笑う子供みたいな黒瀬の笑顔。
「黒瀬が…笑った」
「はー?笑ってないです」
黒瀬はそういうと、とっさに口を手で押さえた。
上がった口角を見せないように。
「笑ったよー!黒瀬!」
「水谷さん、目悪いんじゃないですか?悪いのは頭だけにしてください」
「だ、だって笑ったもん!」
「うるさいです」
「うっ」
黒瀬は着てたダウンジャケットを私の頭にフワッと被せてると
「ほら、、風邪引くので中に入りますよ」
と優しく言ってから、先を歩いた。
そんな行為にまたドキッとしてしまう。
黒瀬が…笑った。
「ちょっと待ってよー!」
私はそう叫んでから、黒瀬の背中を追いかけた。