「葵、俺には隠し事できないから」
翠さんは自信満々にそう言う。
「それで、莉子ちゃんはどうしてそんなに葵の過去を知りたがるの?」
「それは…何が原因でああなっちゃったのか知らないと、黒瀬を笑顔にできないからです」
「…黒瀬を笑顔に?」
「麻友さんと約束したんです!黒瀬を笑顔にするって!」
「ふーーん。莉子ちゃんさー。葵のこと好きでしょ?」
「はっ?!」
翠さんのセリフに目を丸くする。
なんで私が黒瀬を?
私には、マコトくんって立派な彼氏もいるし。
「ありえませんよー。黒瀬なんか」
「好きでもない人のこと笑顔にしたいなんて、普通思うかな?」
「いや、私は麻友さんの気持ちを思って…」
「へー。そっか。じゃあ俺の勘違いだね」
「そうですよー!全然そんなんじゃないですから!私と黒瀬は!ただ…」
「わかったわかった。…ほらついたよ」
翠さんがそう言って笑った方向に私も目を向ける。
「うわ…!!綺麗」
そこには、山と雪の絶景が広がっていた。
「でしょ?これ見ると嫌なことぜーんぶ忘れるの。一年間たまったやなこと全部ここで吐き出す」
「素敵ですね…」
「葵も小さい頃から大好きなんだ」
「黒瀬も…」
年が明ける前に。
黒瀬を笑わせてあげたい。
どうして心を閉ざしてしまったのか知らないけど。
ありがた迷惑なのかもしれないけど。
彼の笑顔が見たい。



