生温い夜風に乗って漂う夏の夜の匂い。
夜空に咲く花火は、湖の水面にも映っていた。
きっと何年経っても、あたしは忘れない。
夏の匂いを感じるたびに、思い出すよ。
この幻想的な花火も。
彼の横顔も。
胸の奥に感じる切なさも。
涙がこぼれそうなくらい、幸せな気持ちも……。
あたしは彼の浴衣の袖を、くしゃっとつかんだ。
「本当にありがとう」
何百回、何万回言っても、全然足りないけど。
ありがとう。
あたしに、ヒミツの場所を教えてくれて。
こんなきれいな景色を見せてくれて。
あたしと友達になってくれて。
いつも一緒にいてくれて、ありがとう。
彼と出逢ってから、
寂しいって思う時間が、前より少なくなった気がするの。
ずっとひとりぼっちだったあたしの心に、
優しく寄り添ってくれた人。
これ以上は望まないから。
だから……。
「さくら……」
彼は真剣な瞳で、まっすぐにあたしを見つめる。
「俺……友達やめたい……」



