春、さくら、君を想うナミダ。[完]




「着ーいたっ」



「ここ?」



「なっ?大丈夫って言ったろ?」



彼に連れられてやってきたのは、



あたしたちがよく一緒に過ごしている湖畔のベンチ。



ふたりだけのヒミツの場所。



「少し離れてはいるけど、ここから花火見えるから」



そういえば、



高校の入学式の日に、彼が言っていたことを思い出した。



夏は、ここから花火が見えるって。



「俺、自販機でジュースでも買ってくるよ」



そう言って彼は、あたしの手首を離した。



暑さは昼間に比べたらだいぶマシになってきたのに、



緊張しているせいか、すぐにノドが渇く。



「さくらは、何飲みたい?」



「あたしも一緒に行く」



「じゃ、行こっ」



先に歩き出した彼のあとを追いかけようとしたら、



草むらに落ちていた石につまずいた。



「きゃっ……!」



「……っぶね」



前のめりに倒れそうになったあたしを、彼が咄嗟に抱きしめてくれた。