春、さくら、君を想うナミダ。[完]




湖のまわりを20分くらい散歩しただろうか。



あたしたちは、もう一度ベンチに戻ってきた。



モモは思い切り走りまわって疲れたのか、ベンチのそばの草むらに、ゴロンと寝っ転がった。



「モモー、大丈夫かー?」



「ふふっ。疲れたみたい」



モモの様子を見つめながら、あたしたちはベンチに並んで座った。



「あ……夏休み前に借りてた本、返そうと思ってたのに持ってくるの忘れちゃった」



「もう読んだのかぁ。返すのなんて、いつでもいいよ」



突然の電話に、なに着ていこうか迷って何度も服を選び直していたら、



本のことをすっかり忘れてしまった。



「どうだった?本の感想は」



「うん。すごくよかった。感動して泣いちゃった」



ある夫婦の話で、記憶を失くしてしまった妻を、いつまでも純粋に愛し続けていく夫の切なく温かい物語だった。



「さくらは、どのシーンが好き?」



「好きなシーン、たくさんあったから迷っちゃうな」



いつものように読み終わった本の感想を話し合って盛り上がる。



「わかるっ!俺もあのシーン泣きそうになった」



「本当に?」



「うん」



自分では気づかなかった発見もあったり、



同じ文章を読んでいても彼とあたしでは受け取り方が違うこともあったりして、



それについてまた話し合ったりして。



彼とのそういう時間が、本当に楽しい。



彼と話をしていると、いつもあっという間に時間が過ぎてしまう。



まだ夜になってほしくない。



もっと、たくさん話がしたい。



彼とまだ



一緒にいたい……。