春、さくら、君を想うナミダ。[完]




生温い風が頬を撫でていく、夏の夕暮れ。



春は桜並木で薄ピンク色に染まる湖畔沿いの景色も、夏は濃い緑色の葉が茂っている。



モモを連れて、待ち合わせ場所に急いで向かった。



「さくらーっ」



笑顔で手を振る彼のほうに、あたしはモモと一緒に走っていく。



どうしてこんなに、胸がドキドキするんだろう。



「モモ~。元気だったかぁ?」



彼に撫でてもらっているモモは、とてもうれしそうにしている。



……会いたかったよね、モモも。



「ここに来るの、ずいぶん早かったね。近くで遊んでたの?」



うちから湖までは、歩いて数分の距離。



だけど、彼の家からここまでは、



最低でも20分はかかると前に聞いたことがある。



なのに彼は、あたしたちよりも先にこの場所で待っていた。



「あ……実はこの場所から、さくらに電話したんだ」



彼は髪を掻きながら、あたしから視線をそらした。



「そうだったの?」



「……うん」



少し恥ずかしそうに、彼はチラッとあたしの顔を見る。



なんだろう、この気持ち。



うれしくて、胸の奥がくすぐったい。