春、さくら、君を想うナミダ。[完]




『さくら、いまなにしてた?』



「え?えーっと、えーっと……」



縁側でダラダラしてたって、なんだか言いたくなかった。



「宿題してました」



堂々と嘘をついてしまった。



『えらいな~。宿題かぁ。俺まだ全然やってない』



本当はあたしも全然やってないのに、なんで嘘ついちゃったんだろう。



話すのが久しぶりで、緊張して……。



『なぁ……今日ってもう、モモの散歩行った?』



「ううん。これから行こうと思ってたところ。やっと涼しくなってきたし」



『そっか。あのさぁ、さくら……』



「うん」



『俺も一緒に行っていい?』



彼の言葉を聞いた瞬間、あたしは思わず立ちあがってしまった。



「うんっ!ど、どーぞっ!」



思いがけない彼の言葉に、声が上擦ってしまう。



『じゃあ、いつもの場所で』



「うん、いつもの場所でね」



電話が切れて、あたしは大きく息を吐き出した。



右手で胸を押さえると、鼓動が速くなっていることに気づく。



彼に会える……。



いまから会えるんだ。



あたしは家の中に向かって、大きな声で叫んだ。



「モモーっ!お散歩行くよーっ」



どうしよう。



彼に会えるだけで、こんなにもうれしいなんて。